小説「光の物語」第1話 〜婚約 1〜

小説「光の物語」第1話 〜婚約 1〜

スポンサーリンク

婚約 1

その姫は緑の瞳で微笑んだ。


なめらかな頬と波打つ金の髪、非の打ちどころのない鼻梁、薔薇色の口元。
隣国から嫁いできた婚約者は、淡い水色のドレスをまとって初対面の場にあらわれた。


「アルメリーア・ルシア・リーヴェンでございます」


その声はあたたかな人柄を感じさせ、王子はやすらぎとときめきを同時におぼえた。


「ディアル・ド・ローゼンです」


差し出された白い手を取り、手の甲に口付ける。
その手を離すまでには少し長い間があった。


隣国から嫁いできた姫との初顔合わせ。城の中でもひときわ美しい庭園で行われたそれは、王子にとって運命の時間となった。
美女の呼び声高い姫ではあったが、実際の彼女はただ美しいだけでなく、立ち居振る舞いから纏った空気まで存在すべてで彼を魅了した。


「長い旅だったでしょう。お疲れは取れましたか?」
ちょうど見頃のバラ園を案内しながら彼は聞いた。
「ええ、もうすっかり」
「隣国からの山越えは難路です。まだ雪が残っていたのでは?」
「少し。でもとてもいいお天気でしたわ。山を下りたら春の花が美しくて」
春とはいえ道中は険しい山岳地帯だ。気楽な道ばかりではなかっただろうが、女らしい話題で和ませる彼女に王子はますます好感を抱いた。


「花がお好きなのは伺っています。あなたとの結婚が決まったとき、父と相談してこのバラ園を作ったのです」
「まあ・・・」
「あなたがこの国でも花を楽しめるように。バラは何色がお好きですか?」
「そうですわね・・・やはり赤かしら。どの色も美しいけれど」
「では・・・」
王子はひときわ美しいバラを選んで手折ると、彼女に差し出した。
「部屋にお持ちください。また明日お会いしましょう」
赤い花弁の香り高いバラを姫はそっと受け取った。