小説「光の物語」第2話 〜婚約 2〜

小説「光の物語」第2話 〜婚約 2〜

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婚約 2

結婚式までの一週間、2人には毎日会う時間が設けられていた。
式の準備や公務に追われて忙しくはあったが、王子は姫に会える午後のひと時を心待ちにしていた。
時間が近づくとそわそわしだし、予定よりもだいぶ早く姫と会う庭園へと向かうのだった。


「仮縫いに追われていますの」
アルメリーアはそう言って笑った。
「花嫁衣装の?お国からお持ちになったのでは?」
ディアルは姫をエスコートしながら庭園を歩いていた。


「そうなんですけれど、旅の間に少し痩せたとばあやがうるさくて。花嫁衣装は完璧にフィットしていないとだめだと」
微笑んだ彼女が振り返る先には、お目付役としていつも付き従っているばあやと、侍女の一群がいるのだった。
「それももっともですが、あなたなら何を着ても文句を言う人などいやしませんよ」
「ばあやは厳しいんです」
クスクスと笑う彼女にディアルもつられて笑った。


「殿下こそ、毎日ご公務にお忙しいとか」
「忙しいというほどのことでは。それに殿下はおやめください。どうぞディアルと」
「ディアル様・・・」呼んでみて微笑む彼女にディアルはめまいがしそうだった。「素敵なお名前ですわね」
「あなたの名こそ美しい、アルメリーア」
名前を呼ばれて姫は一瞬はっとしたようだったが、すぐに今までよりももっと親しみのこもった笑顔がひろがった。
「嬉しいですわ」


彼女の笑みに魅了された彼は無言のままふと身をかがめ・・・



彼自身すら予期しない行動だったが、ディアルは姫にそっと唇を重ねていた。