小説「光の物語」第16話 〜王城 2〜

小説「光の物語」第16話 〜王城 2〜

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王城 2

「姫様、殿下が城にお戻りになりましたよ」
その知らせにアルメリーアは思わず椅子から立ち上がる。
昨日の早馬が今日の帰城を知らせてきて以来、彼女はそわそわし通しだった。


「本当?いまどちらに?」
彼女ははやる思いで侍女に尋ねた。
「まあ、落ち着いてくださいませ。まずは陛下へのご挨拶においででしょうから。じきにこちらにおいでになりますとも」ばあやが微笑ましげにたしなめる。
アルメリーアは両手を組み合わせ、走って夫に会いに行きたい気持ちをおさえた。




「殿下のお越しでございます」
侍女が告げると同時に部屋の外がざわつき始め、ディアルが部屋に入ってきた。
淡い緑色のドレスを着たアルメリーアは立ち上がり、言葉も出ないまま彼を見つめる。
戦場から戻ったばかりの彼は鎖帷子の上に王国の紋章が入った戦衣を着、その上にマントをつけていた。
「アルメリーア」彼女の姿を見て満面の笑みを浮かべる。


お付きの者たちはそっと部屋から下がっていった。
ドアが閉まるよりも早く、彼は大股で彼女に歩み寄る。
アルメリーアは何もかも忘れ、彼の腕の中に飛び込んでいった。




「あの、殿下・・・まもなく祝宴のお時間でございますが・・・」
日も暮れた頃、ドアの外から侍従が何度目かの声をかける。
「・・・ああ、先に始めていてくれ。すぐに行くよ」
部屋の中からディアルのけだるげな声が答えた。
「妃殿下の侍女たちもお待ちしております。ご婦人の身支度はお時間が・・・その・・・」
汗をかきながら言ってはみたものの返事はなく、侍従はばあやと顔を見合わせて首を振るしかなかった。


「・・・ディアル様、もう行かれたほうが・・・」
寝台から身を起こそうとするアルメリーアをディアルは腕に閉じ込めた。「まだいいよ」
「遅れてしまいますわ」さきほどから何度目かの言葉をもう一度繰り返す。
「私がいようがいまいが兵士たちは気にしないさ。皆の目当ては酒と食事とどんちゃん騒ぎだからね」ディアルは彼女の首筋に顔をつけたまま答えた。
「でも・・・陛下も出席なさるのでしょう?」眠たげな空気に抗おうとシーツを引き寄せる
「父上はきみと仲良くするようにと言っていたよ」彼女が隠そうとする肌にキスを落とす。
「それはこういう意味ではないでしょう?」キスから逃れながらアルメリーアが笑う。
「絶対にこういう意味だよ」すっかり暗くなった部屋に二人のくすくす笑いがひびいた。


宴もたけなわのころ、ようやく王子と王子妃はその場に現れる。


ことの次第を侍従から聞いた国王は、笑いを噛み殺して威厳を取り繕った。