小説「光の物語」第17話 〜王城 3〜

小説「光の物語」第17話 〜王城 3〜

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王城 3

軍務こそ一段落したものの、謁見をしたり進講を受けたりと公務は日々絶え間がなかった。
他国から嫁いできたアルメリーアはローゼンベルク宮廷のやり方に慣れる必要があり、骨の折れることも多かった。
式典や施設への訪問もこなしたが、これはディアルにとって以前ほど退屈ではなくなっていた。


「式典に出るのもそう悪くないな」とある博覧会からの道すがら、ディアルは妻に告げた。「以前は一人で行っていたけど、いまはきみと一緒だからね」
アルメリーアは手にキスされて微笑んだ。「話し相手がいればあくびも出にくいし?」
「その通り。それに帰りに馬車の中でいちゃつける」
彼はさっそくその言葉を実行しようとし、アルメリーアは笑って押しとどめる。城に着くまでそのやりとりが続いた。




帰城後ディアルは会議に入り、アルメリーアは侍女たちの話に耳を傾ける。
彼女たちの話を通じて王城内の動向を頭に入れておくのは大切なことだった。


「ミルツ侯爵がご息女を行儀見習いとして姫様のおそばに上がらせたがっているとか。すでに陛下にお願いしてお許しをいただいたらしいですわ」侍女の一人が言う。
「そうなの。いくつくらいの子かしら?」
「14、5歳くらいのようですわ。王子妃殿下付きとなれば箔がつきますから、良い縁談につながると考えてのことでございましょう」
「そうね。詳しいことが決まったら陛下からお話があるでしょう」


「もう一人、シュレマー伯爵のご子息も見習いとしてお城に上がるようです。まだ10歳にもならないそうですが」
「まあ、小さな子が大役を仰せつかったのね」とアルメリーアは笑う。「リーヴェニアでも小さな子たちが城に上がっていたわね。みな元気にしているかしら」
「ほんとうに・・・姫様がお国を離れるときはみなさま泣いて大変でしたわね」まわりの侍女たちも後にした故郷を懐かしんだ。


「それから、貴婦人方から謁見の申し込みもいくつか来ております」
ディアルの母である王妃はすでに亡くなっているため、王城を訪れる貴婦人たちに謁見するのも彼女の役割だった。
「そう・・・今日はどんなお話が聞けるのかしら」苦笑まじりに相槌をうつ。
「犬猿の仲のゼンケル夫人とビュシュケンス夫人もおいでですから、おおいに賑やかになるかと」
「楽しみなことね」アルメリーアは小さく首を振りながらつぶやいた。