小説「光の物語」第18話 〜王城 4〜

小説「光の物語」第18話 〜王城 4〜

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王城 4

謁見に来た夫人たちはみな、なんらかの便宜を望んでいるか、なにかに腹を立てているかだった。
また、娘を持つ母親は宮廷内をうろつく誘惑者のことも噂した。


「嫁入り前の娘を持つ母は気をつけませんと」
娘の縁談について相談に来たパジェス夫人だが、アルメリーアを噂話に引き入れることの方により興味があるようだ。
「大きな声では言えませんけどキアーラ伯爵家のお嬢様は・・・後始末がそれは大変だったようで」
「後始末?」


尋ねるアルメリーアに、パジェス夫人はわざとらしく声をひそめた。
「誘惑された若い娘は、お腹が目立つ前にどこかに片付いてしまわねばなりませんから・・・たんなる噂でございますけどね」
明らかにゴシップを伝えるのが楽しくてたまらないらしい。
アルメリーアの記憶によると、キアーラ伯の令嬢は先月、父親よりも歳上の男爵の後妻に入ったはずだった。


「そんな噂は誰のためにもなりませんよ。それよりその誘惑者というのは誰なのかしら?」
遠回しだがはっきりと制され、夫人はさすがに気まずそうだ。
「それが、はっきりとはしないのです。いろいろ名前は上がりましたけれど・・・たしかなことは誰にも」
「そう・・・」


うら若い娘を襲ったらしい運命に胸が痛む。
ようやく貴婦人たちとの謁見を終え、アルメリーアは疲れた頭を休ませようと侍女たちを下がらせた。