小説「光の物語」第23話 〜見習 4〜

小説「光の物語」第23話 〜見習 4〜

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見習 4

「この間からちょっと元気がなかったんだよ」
夜、寝室でディアルにサロンでの出来事を話すと彼はそう言った。
「気にはかけてたんだが」
「ああ・・・」
それで先日の雪遊びの時にパトリックに構っていたのかと思い当たり、アルメリーアは気持ちが和むのを感じた。


「きみがフォローしてくれて助かったよ。小さい子を世話するのは難しいものだね」
長椅子の彼女の隣に座る。
「きみの見ている子はどう?」
アルメリーアは微笑んだ。
「相変わらず元気ですわ。いまはお友達も来ているから余計に。結婚について質問攻めにされるのが困りものだけれど」
「へえ?」彼は興味を持ったようだ。「どんな質問?」


「それはもう山ほど。お幸せですか、殿下はお優しいですかって」
「それできみはなんて答えたの?」彼女の長い髪を手に取ってもてあそぶ。
「それは・・・」言いかけて笑ってやめにする。「女同士の話ですもの」
「聞きたいな」
ディアルはふざけて食い下がったが、彼女はただ首を横に振るだけだった。


「じゃあ私から質問するよ。きみはこの結婚生活をどう思っているのかな?」
わかっていて聞く彼にわからないふりで答える。「どうって?」
「少なくともそう悪くはない?」
アルメリーアは思わず笑みをもらした。「まあ、パトリックよりも甘えん坊がいたわ」
「大いに甘やかされたい気分だよ。それで?」


彼女は彼の肩に頭をあずけた。
「私がどう思っているかは知っているでしょう?悪くないどころじゃないわ。とても素晴らしいに決まっていてよ」
「ほんとに?」彼は満足そうに彼女を抱き寄せた。「私が好きか?」
「ええ、もちろん」アルメリーアの笑みはますます大きくなった。「困った方ね」
「私のどこが好き?」彼女の頭のてっぺんにキスする。
「全部、では足りません?」
「完璧な答えだが、いまはもう少し浮ついたことを聞きたいな」
額に額をくっつけてせがむ。


「そうね・・・あなたの手が好き。大きくて温かくて、とても大切そうに触れてくれるから」
「いいね」彼女の手をそっと包んで指でくすぐる。「ほかには?」
「あなたの声も好き。聞いていると幸せな気持ちになるわ」
「私もきみの声が好きだよ。私を愛しさで満たしてくれる。それと?」
「あなたの匂いも好き」彼の首筋に顔を埋めてささやく。「とてもいい匂いだから」
「いい匂い?」意外そうに笑って彼女の頬に口をつけた。「きみもいい匂いだよ。とてもね。花のように美しいリーア。あとは?」


「あとは・・・キスがとても素敵なところかしら」
その言葉を聞いてディアルは彼女にキスをした。
「私はきみに踊らされているのかな?」唇を離したあと、彼は呟いた。「いまのは私を黙らせるのが狙い?」
「どうかしら・・・だとしたらご不満?」彼女は彼の頬に指先を這わせた。
「どうかな。キスしながらゆっくり考えるよ」


結局ディアルに不満はなかったらしく、その夜それ以上の質問がされることはなかった。