小説「光の物語」第26話 〜降誕祭 3〜

小説「光の物語」第26話 〜降誕祭 3〜

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「真冬までの調査、ご苦労だったな」
肩をたたいてねぎらうディアルにマティアスは苦笑いした。
「まったくだ、もう少しで雪山の露と消えるところだよ。しばらくは貴婦人方に囲まれて気楽に過ごしたいね」


マティアスの言葉にディアルはふと何かを感じた。
「おまえは結婚しないのか?」
「よしてくれ」笑いながら打ち消すように手を振る。「考えたくもないね」
「ヴュルツナー公爵家の長男がいつまでも独身ではいられないだろうに」
「両親の二の舞はごめんだよ。わかってるだろう」
マティアスの両親は昔から折り合いが悪く、夫妻はマティアスが子供の頃からほとんど口もきかない間柄だった。


「逃げられる限りは逃げ回るさ。どこかの誰かは幸せそうで実に結構だがね」
矛先が自分に向いたのを感じてディアルは笑った。
「新婚の王子夫妻の噂はあちこちで聞いたぞ。たいした熱愛ぶりらしいな」
「ああ」
こともなげに答えると、マティアスはやれやれというように首を振った。


「おまえだって幸運に恵まれるかもしれないぞ、わが友よ」
「そうでなかった時の悲惨さは身に染みているんでね・・・」
悲観的につぶやくマティアスに、ディアルはそれ以上言うのはやめにした。