「ナターリエ嬢?彼女がどうしたの?」
嫌な予感がする。
先日ナターリエに外出の誘いを伝えたところ、彼女はとても嬉しそうにしていた。
行き先の修道院についてアルメリーアを質問攻めにしたり、本で調べたりと待ち遠しい様子を見せていたのだが・・・。
「どうしましょう・・・あの子・・・お母様の仕打ちに傷ついて・・・」
「ベーレンス夫人が?今度はなにを・・・?」アルメリーアの瞳に怒りがよぎる。
「彼女が大切にしていた本や、宝物にしていた品を暖炉で燃してしまわれたんです。調子に乗るなと言って・・・」
「な・・・」
あまりのことに言葉が出ず、長椅子の背に崩れるようにもたれかかる。
「それであの子、どこかへ・・・さっき女官がこの手紙を届けに来て、朝からお姿が見えないと・・・」
「そんな・・・一体どこへ・・・」
渡された手紙に目を通したが、具体的なことは何も書かれていない。
ただ、自分はいなくなった方がいいとあるだけだった。
アルメリーアは震えそうになるのをこらえた。
ただの家出ならまだしも、もし早まったことを・・・。
「行き先に心当たりはあって?」
アルメリーアの問いにクリスティーネは首を振る。
「わかりません・・・王都には詳しくないと思いますし、故郷のお城に向かわれたのかも・・・」
「そうね。王城に来て以来ほとんど外出もしていなかったようだし・・・あの子は父君とのほうが親しいのかしら?」
「そうは思えません・・・あそこのお父様は・・・」クリスティーネはふいに激しく嗚咽した。「ナターリエ様・・・おかわいそうに」
泣き続ける少女を抱きしめてやりながら、アルメリーアも胸がつぶれる思いだった。