小説「光の物語」第63話 〜悲報 3〜

小説「光の物語」第63話 〜悲報 3〜

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悲報 3

「ナターリエ嬢・・・」
王立修道院に訪れたアルメリーアは、ナターリエの元気な姿を見て安堵の笑みを浮かべた。
むしろ王城にいたときよりも落ち着いて、顔色もいい様子だ。
今は夫と自分を迎えるためにかしこまってはいるが・・・。

 

「王子殿下と王子妃殿下には大変なご心配をおかけいたしまして・・・」
「いいのよ、堅苦しい挨拶は抜きにしてちょうだい。あなたが無事で本当によかったわ」
アルメリーアは親しみを込めてナターリエを抱きしめる。
少女の華奢さを感じ、これからの辛い知らせを心底痛々しく思った。

 

抱きしめられたナターリエは、どうしてこんな方がこの世にいるのだろうと思った。
こんなふうに温かくて、美しくて、よい香りのする方・・・。
きっと悲しみはこの方をよけて行くのだろう。
自分とはまるで別世界の方・・・。

 

「ナターリエ嬢、王立修道院の居心地は気に入ったかな?アーベルはよくしてくれているか?」ディアルが穏やかに尋ねる。
「は、はい・・・皆様にはほんとうにご親切にしていただいて・・・」
ナターリエは王子に話しかけられてますます固くなり、消えいらんばかりの声で答えた。

 

「それは何よりだ」
ディアルは続ける前に一息置いた。こんな役目は彼にとっても辛いことだ。
「ナターリエ嬢、今日我々がここに来たのには訳がある。決して良い話ではないが、落ち着いて聞いてほしい」
アルメリーアはナターリエの背に手を当て、大きな椅子に導いた。
「ナターリエ嬢、座りましょう。さあ・・・」
王子妃と並んで座りながら、ナターリエは戸惑いの目で交互に二人を見た。

 

 

 

「ナターリエ嬢・・・」
話を聞き終えたナターリエは、あまりに悲惨な両親の最期に嗚咽し続けていた。
「かわいそうに・・・本当に言葉もないわ」
ナターリエを抱いて慰めるアルメリーアも胸が張り裂けそうな思いだった。
「わ、私が・・・」
ナターリエは嗚咽の間から言葉を絞り出した。
「私がこんなだから、二人とも・・・私が役立たずの娘だから・・・」
「何を言うの・・・」
アルメリーアはナターリエの顔を両手で包んだ。
「そんなふうに考えてはいけないわ。ご両親の間に起きたことはご両親の問題なのよ。あなたにはなんの責任もないことなの」


アルメリーアの言葉もナターリエの耳には入らないようだ。
彼女は首を振り、身悶えして身も世もなく泣き続けた。