光の物語

小説「光の物語」第10話 〜春 2〜

いくつもの塔を持つその城は湖の小島に建てられていた。 白く輝く城壁は湖に姿を映し、城を囲むように植えられた木立は風をはらんで枝を揺らしている。 「まあ、なんて…

光の物語

小説「光の物語」第9話 〜春 1〜

「湖のお城へ?」 「ああ」 二人は庭園の東屋にすわり、数日後からの旅について話し合う。 ローゼンベルク王室では新婚夫婦がその城へ旅するのがかねてからの慣例であ…

光の物語

小説「光の物語」第8話 〜婚礼 4〜

婚礼 4 アルメリーアは寝室の窓のそばに佇んでいた。 金色の長い髪を腰までたらし、やわらかな白い夜着に身をつつんだ姿にディアルは胸を高鳴らせた。 ドアを開けた…

光の物語

小説「光の物語」第7話 〜婚礼 3〜

婚礼 3 「いよいよ寝室で美しきスパイとご対面か」 「そんな言い方はよせ」 祝宴ののち自室に戻る王子をマティアスがからかう。 彼とは幼馴染で気心も知れているが…

光の物語

小説「光の物語」第6話 〜婚礼 2〜

婚礼 2 「麗しき王子と王子妃にもう一度乾杯!」 婚礼の祝宴は長々と続き、祝い酒に酔った出席者たちは止めどなく乾杯を繰り返した。 主役の王子妃夫妻にとって肩の…

光の物語

小説「光の物語」第5話 〜婚礼 1〜

婚礼 1 婚礼の日は雲ひとつない晴天に恵まれた。 大聖堂に現れたアルメリーアは、ディアルだけでなく物見高い列席者の心をも魅了した。 シンプルだが贅を尽くした花…

光の物語

小説「光の物語」第4話 〜婚約 4〜

婚約 4 「それにしても美しい姫だ」 婚礼衣装の試着をするディアルに従兄弟のマティアスが言う。 「ああ、そうだな」上着を脱ぎながらディアルは答えた。「申し分の…

光の物語

小説「光の物語」第3話 〜婚約 3〜

婚約 3 「まったく、油断もすきもない!」 ばあやは部屋に戻った後もまだ怒っていた。 思いがけないキスのあと2人はばあやの金切り声で我にかえり、ディアルはばあ…

光の物語

小説「光の物語」第2話 〜婚約 2〜

婚約 2 結婚式までの一週間、2人には毎日会う時間が設けられていた。 式の準備や公務に追われて忙しくはあったが、王子は姫に会える午後のひと時を心待ちにしていた…