小説「光の物語」第70話 〜新天地 4〜

小説「光の物語」第70話 〜新天地 4〜

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新天地 4

ナターリエは修道院での静かな暮らしを続けていた。
日々を祈りと日課の中で過ごし、時には修道院の畑を手伝ったり、アーベルに教わって編み物をしたりした。
華やかな王城での暮らしとはかけ離れていたが、彼女はこちらの方が性に合うと感じる。
淡々と過ごすうち、本当に修道女になるような気さえしてくるほどだった。


アーベルや修道女たちに見守られ、両親と恋を失った打撃からも少しずつ回復してきた。
悲しみに打ちのめされて動けない日も徐々に少なくなっていった。
時には涙で眠れない夜もあるが・・・。


そんなナターリエの慰めは、時折やりとりするパトリック少年との手紙と、それから修道院にいる幼い貴族の令嬢達だった。
さまざまな事情で修道院に入れられる少女たちのなかには、ほとんど教育を受けていないものもいる。
アーベルに頼まれ、ナターリエはそんな子達に文字の読み書きを教えていた。




「ナターリエは修道院でも先生役をやっているそうよ」
お茶の席に届いたアーベルからの手紙に目を通し、アルメリーアは安堵の笑みを浮かべた。
「あの子は王城にいる時からそうしていたものね・・・おかげでパトリックも母君と文通ができて」
「そうだね。パトリックはナターリエ嬢とも文通しているそうだよ。あいつは女性の心を掴むのがうまいな」お茶とお菓子の置かれたテーブルを物色しながらディアルは笑った。


「ナターリエにはなんとか立ち直ってほしいわ。あの子には幸せになってほしいもの」少し離れた長椅子にかけたアルメリーアは、願いを込めるように手紙を見つめる。
「彼女はいまや女伯爵だ。結婚相手には不自由しないだろうが、相手は慎重に選ばないとね」彼女のもとにお茶を運びながらディアルが言う。
「本当ね。ふさわしい方が現れるといいけれど・・・」
手紙を封筒に戻しながら彼女も答える。
「修道院では出会いようもないが。もう少ししたらまた社交界に出る気になるかな?」
「そうなってほしいわ・・・」手紙を横のテーブルに置き、渡されたお茶を受け取った。