深雪 10
修道院の居間でテレーザや修道女たちと編み物をするナターリエのもとに、彼女が勉強を教える子どもたちがやってきた。
「ナターリエ様」
なんとなく恥ずかしそうな、もじもじした笑顔を皆で浮かべている。
「どうしたの?」
その様子に笑みを誘われながらナターリエは尋ねた。
「あのね・・・これ」
皆が手に手に小さな封筒を差し出す。
ナターリエに読み書きを教わった子どもたちは彼女への感謝を手紙にしたため、手作りの封筒に入れて降誕祭の贈り物にしたのだった。
全員からの封筒を受け取ったナターリエは感激で言葉が見つからない。
手紙を開くと、それぞれがおぼつかない字で一生懸命書いた言葉が並んでいた。
あるものは紙からはみ出しそうな字で、またあるものは紙のすみっこに小さな字で降誕祭の挨拶を記している。
少し前までは自分の名前を書くのがやっとだったニーナの「降誕祭おめでとう、ナターリエ様大好き」という手紙を見て、彼女の目から涙がこぼれ落ちた。
「いやだ、ナターリエ様泣かないで」
両手で顔を覆うナターリエに少女たちも泣きそうな声を上げる。
「悲しくて泣いているんじゃないの・・・嬉しいからなのよ」
両親のことを思い出して涙する夜は今でもあるが、これはそれとはまるで別物だった。
指で涙を拭いながらナターリエは微笑み、子どもたちは彼女に抱きついたり頭を撫でたりする。
テレーザや修道女たちも微笑みを浮かべてその様子を見守る。
無邪気な子どもたちにもみくちゃにされながら、ナターリエはこれほど暖かい場所にいたことはないと思った。
その夜、ナターリエはマティアスへの手紙をしたためた。
先日送った手紙に対する彼からの返事はまだ来ていなかったが、今回のは降誕祭の挨拶状だ。
だから、送ってもいいわよね・・・?ナターリエはそう思いを巡らせる。
それほど多くのことは書かなかった。
ただ降誕祭を祝う言葉と、この場所に連れてきてくれたことへの感謝を伝えた。
あなたのおかげでとても幸せですと。