小説「光の物語」第37話 〜新年 3〜

新年 3 「フランツ、しばらくだな」 王城に到着した砲兵隊長、フランツの挨拶にディアルが答える。 フランツは髭をたくわえた三十がらみの男で、十代の頃から砲兵隊…

小説「光の物語」第36話 〜新年 2〜

新年 2 「殿下、ぼくお聞きしたいことがあります」 暖炉前で剣の手入れをするディアルに従者見習いのパトリックが言う。 「なんだ?」 刃先の様子を確認しながらデ…

小説「光の物語」第35話 〜新年 1〜

新年 1 新しい年になり、社交真っ盛りだった王城の雰囲気も平時のものに戻りつつあった。 各地から任務を負った諸侯が上洛し、城は新たな国づくりにむけて活気づいて…

番外編 雪の宵

雪の宵 「初めて会った時から私の子供が欲しかったって?」 何度か愛し合ったあと、アルメリーアの肩を撫でながらディアルは尋ねる。 目を開けると、彼女を抱き寄せた…

小説「光の物語」第34話 〜降誕祭 11〜

降誕祭 11 「マティアス様は?」 気遣わしげに尋ねる妻をエスコートしながらディアルは答えた。 「行くところがあるんだそうだよ」 「そう・・・」 女性に人気の…

小説「光の物語」第33話 〜降誕祭 10〜

降誕祭 10 降誕祭の長い礼拝が終わり、ディアルとアルメリーアは聖堂から小雪の舞う外へ出た。 「やれやれ、やっと終わった」 ため息混じりに口にするディアルにア…

小説「光の物語」第32話 〜降誕祭 9〜

降誕祭 9 「お久しゅうございます、殿下」 降誕祭の礼拝に集まった人々の中に、ディアルにとって懐かしい人物がいた。 以前王城の女官長を務めていたエデルガルド・…

小説「光の物語」第31話 〜降誕祭 8〜

降誕祭 8 「気は揉まされるが、恋に憧れるのは罪ではありません。彼女が正しい相手に出会うことを願いますよ」 自分とは別世界の話をするかのようなマティアスに、ア…

番外編 少年マティアスのつぶやき

番外編 少年マティアスのつぶやき 私の名はマティアス。ヴュルツナー公爵家の長男です。 私の父は国王陛下の末の弟です。 母は大貴族の娘で、政略結婚で父に嫁ぎまし…

小説「光の物語」第30話 〜降誕祭 7〜

降誕祭 7 冬の社交が本格的に始まった。 大広間に集まった諸侯たちはあちこちで輪を作り、噂話に花を咲かせていた。 美しく装ったアルメリーアは諸侯たちの挨拶に言…