小説「光の物語」第46話 〜胎動5〜

小説「光の物語」第46話 〜胎動5〜

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胎動 5

泣いていたクリスティーネは、話をするうちに少しずつ落ち着いた。
婚約者のリヒャルトと結婚式についての意見が食い違い、大げんかになってしまったらしい。


「申し訳ありません・・・妃殿下の前で恥ずかしいです・・・」
ようやく泣き止んだクリスティーネは消え入りそうな声で詫びた。
「いいのよ。あなたは妹も同然ですもの」
クリスティーネの肩を撫でながらくすりと笑う。
「あなた方のことだから明日には仲直りでしょうけれど・・・いつもそうなんだから」
この小部屋には二人のほか侍女数名がいるのみで、女同士の話に遠慮したディアルはとうに仕事に戻っていた。


「妃殿下、今日はとくにお綺麗です・・・ご公務だったのですよね?」
アルメリーアの盛装した姿にクリスティーネは今更ながら気づいたようだ。
「王立修道院に行っていたのよ。附属病院の慰問にね」
気を取り直した様子のクリスティーネに微笑みかける。
「行ったことがあって?」
「いいえ・・・」


「由緒あるすばらしい建物だったわ。とても静かな雰囲気で・・・」
言いかけた彼女はふとあることを思いつく。
「あなたのお友達のナターリエ嬢だけど、最近はどうしているかしら?」
「ナターリエ様ですか・・・?私も最近あまりお話できていなくて・・・でも・・・」
小さく嬉しそうな笑みを浮かべる。
「たぶん、ナターリエ様にもいい方が現れたみたいなんです。なんだか少し様子が違ってて・・・」


「まあ、本当に?」意外な展開だ。「お相手がどんな方か知っていて?」
「それが、教えてくださらないんです。恥ずかしがってらっしゃるみたいで・・・。私なんて、リヒャルトに会ったその日に全部しゃべってしまったのに」


照れ笑いするクリスティーネに笑みを返しつつ、アルメリーアはなぜか落ち着かないものを感じていた。