小説「光の物語」第127話 〜王都 13 〜

小説「光の物語」第127話 〜王都 13 〜

スポンサーリンク

王都 13

「なんだか元気がないね」
その夜、晩餐室から部屋に戻ったディアルはアルメリーアにそう尋ねた。
「え・・・そうかしら・・・」
さりげなく振る舞っていたつもりだが、夫の目はごまかせなかったらしい。


「どこか具合でも悪い?」
案じる彼に小さく首を振る。
このところ姉のことで悩んでいたうえに、昼にサロンで聞いた話が胸にこたえていた。
それに自分のこうした反応にも嫌気がさしていた。


ディアルは彼女を抱き寄せて頭を撫でる。
「無理に話せとは言わないが、そんな様子だと心配になるよ。まさか他に好きな男でも?」
冗談に彼女は小さく笑い、そのおかげで少しだけ話せるようになった。
「今日、サロンで聞きましたの・・・行儀見習いだったクリスティーネが懐妊したようだと・・・」
ディアルは驚いて手を止め、彼女の顔を覗き込んだ。
彼女は沈んだ表情で俯いたままだ。


「こんなに動揺するなんてと自分でも思うけれど・・・でもとても切なくて・・・」
ディアルは呟く妻の頬に手を当てた。
彼女は眉根を寄せて目を閉じる。
「素直に喜びたいのにそうできなくて・・・情けないわ。妹のようなあの子に嫉妬するなんて・・・」
滲む涙を指先でそっとぬぐった。



「・・・嫉妬ぐらいいいじゃないか。求めてやまないものを他のやつが手に入れたんだ。嫉妬して当然」
頭の上から聞こえた言葉にアルメリーアはほっと気が抜けた。
子供のこともだが、クリスティーネの幸福を手放しで喜べないことが一番辛かったのだ。
「・・・でも、恥ずかしいわ・・・誰にも嫉妬などしたくないのに・・・」
しおれる彼女のほおを両手ではさみ、ディアルは大きな音を立ててキスをした。


「いいや、嫉妬しなきゃだめだ。好きなだけ妬んで、悪口を言って、やっかみの限りを尽くさないと」
涙目でぱちくりした妻に彼は続ける。
「なんなら窓から叫んだっていい。『この生意気な小娘め』って。衛兵を驚かせてやれ」
小さく笑いを漏らす彼女の髪にキスする。
「私も一緒に叫ぶよ。『青二才が百年早い』ってさ。きっとすっきりするだろうな」
泣き笑いしだした妻を抱き上げて寝台に腰掛ける。


「その後はどうしようか。呪い師でも呼んでみる?それとも・・・」
アルメリーアは小さく笑って首を降り、夫に抱きついて首に顔を押し付けた。
彼女の涙で彼の肌が濡れる。


「愛してる・・・」
アルメリーアはすすり泣きながら小さく囁いた。
「私も愛してるよ。私の大切な奥さん」
身を寄せる妻を彼はしっかりと抱きしめた。