小説「光の物語」第131話 〜王都 17 〜

小説「光の物語」第131話 〜王都 17 〜

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王都 17

「ナターリエ様、いい情報を聞いてまいりましたわ」
王城のお茶会に参上していたナターリエは、楽しげに近づいてくるテレーザに苦笑いした。
テレーザはとあることを知るため王子妃の女官と話し込んでいたのだ。


「あそこにいるバルト家のカール様は、なかなかの遊び人らしいですわ。ちょっといい男でございましょう?それに・・・」
「テレーザったら・・・だめよ。人に意地悪するなんて・・・」
ナターリエにつきまとう厄介な少女ブリギッテを追い払うため、テレーザは下調べに余念がない。
しかし、ナターリエはどうも気が進まなかった。


「これくらい、意地悪のうちにも入りませんわよ。クリスティーネ様もそう言ってらしたでしょう」
「ええ。でも・・・」
たしかにクリスティーネに聞いた話には笑ってしまったし、ああした話を面白いと思えた自分も意外だったが・・・。


ためらうナターリエにテレーザはひとつため息をつき、笑みを浮かべて言う。
「・・・では、とにかくお伝えだけしておきますわ。あそこのカール様と、それからあの窓の近くの・・・」
テレーザから教えられる遊び人の情報にナターリエは目を白黒とさせた。



いつもの席からサロンを見渡していたアルメリーアは、楽しそうな様子で戻ってきた女官に声をかけた。
「何か面白いことでもあって?」
尋ねられた女官は嬉しげに答える。
「いえ・・・以前わたくしたちでお調べした誘惑者のリストがございましたでしょう。あれが役にたったのですわ。テレーザから聞かれましたの。ナターリエ様をお守りするため、悪い噂のある輩を前もって知りたいと」
「そうなの・・・そういうふうにも役立てられるのね」
令嬢たちに気を配るため調べたことだが、思わぬ使い道もあるものだとアルメリーアは微笑んだ。



「殿下、到着した諸侯が挨拶に参りました」
書斎の入り口から侍従に声をかけられたディアルは答えた。
「ああ、今行く」
マティスと共に目を通していた書類を置いて立ち上がる。


「多少の遅れは想定して工程を組んでいたが、工事の遅れはそれ以上だな」
ため息混じりのマティアスにディアルも応じる。
「流行病のことまでは予想できなかったからな・・・どうにかして調整せねば」


各地の責任者にもそれぞれの言い分はあろうが、遅れれば遅れるほど影響は多方面に及ぶ。
遅れを取り戻して計画を進めるための舵取りを思い、ディアルはやれやれと頭を振った。