小説「光の物語」第6話 〜婚礼 2〜

小説「光の物語」第6話 〜婚礼 2〜

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婚礼 2

「麗しき王子と王子妃にもう一度乾杯!」


婚礼の祝宴は長々と続き、祝い酒に酔った出席者たちは止めどなく乾杯を繰り返した。
主役の王子妃夫妻にとって肩の凝る時間ではあったが、それでも新婚夫妻が最初に踊るダンスや、用意された余興を楽しんで時は過ぎた。
夜半近くになってようやくおひらきになったが、飲み足りない出席者たちは夜通し祝い続けるのだった。


「姫様、お美しゅうございます」
花嫁衣装から夜着に着替えて髪を長く下ろしたアルメリーアに、ばあやは感慨深くため息をついた。
「ありがとう」
とアルメリーアは微笑んだが、子どもの頃から知るばあやには彼女の不安が見てとれた。


ばあやは思わず姫のやわらかな手をつかみ、
「もしも何か恐ろしいことになりましたら、その時は大声でお叫びくださいませ。そうしたらばあやは命にかえても姫様をお助けに参りますから・・・!」
と、切羽詰まった様子でまくし立てる。


ばあやの剣幕のおかげでかえって気がまぎれた姫は
「大丈夫よ、きっとそんなことにはならないわ。それよりも自分が眠ってしまわないかのほうが心配だわ。とても疲れたんですもの」
と笑い、ばあやの気も楽にしてやるのだった。



王子夫妻の寝室からばあやが下がった後、アルメリーアは一人部屋の中を見回した。
天井と壁の羽目板にはローゼンベルク王国の紋章が施され、大きな寝台には深い緋色のカバーと天蓋がかかっている。
寝台前に配された椅子や調度品もすべて同じ色で統一され、部屋の中央には大きな暖炉が据えられていた。
姫は一つ大きく息をつくと、バルコニーに面した窓に近づいた。
外の様子を見るというより、まもなく訪れることから意識をそらすためだった。


窓から遠くに見える無数の篝火が、城壁を夜の闇に浮かび上がらせていた。