小説「光の物語」第27話 〜降誕祭 4〜

小説「光の物語」第27話 〜降誕祭 4〜

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貴婦人たちが笑いさざめくサロンに戻る。
アルメリーアは奥のソファにかけており、その横には見習いのパトリック少年がちんまり座り、何かを書いていた。


ディアルとマティアスの姿を認めたアルメリーアは微笑み、パトリックは立ち上がって主人を迎える。
「私のいぬ間に妃殿下に接近か?」
ディアルが笑ってからかった。


「パトリックはお母様にお手紙を書いていますの。すこし字を教えていましたのよ」
パトリックは読むのはできるが、書く方はまだおぼつかないところがあった。
「それはいいね。パトリック、母上に良い便りを書けそうか?」アルメリーアの隣に座りながら尋ねる。
「はい!ありがとうございます!」
パトリックの相変わらずの大声にディアルは笑みを浮かべた。


「シュレマー家のパトリックだね。その年から修行とは頼もしい」
マティアスも少年に笑いかける。
「はい!あの、ぼく、その・・・失礼します!」
身分高い大人に囲まれたパトリックは舞い上がってしまい、皆に礼をしてそそくさと出ていった。


「いい子だ」
ディアルの言葉にアルメリーアも頷く。
「けなげですわ。私があの子と話したかったんですの。咎めないでやってくださいね」
彼女は彼の手をそっと握り、彼はその手にキスをして「もちろんだよ」と微笑んだ。
「殿下」
サロンの入り口にあらわれた侍従がなにかを伝えたがっている。
ディアルは妻とマティアスに断って席を立った。