悲報 4
嘆きのうちに時間は過ぎた。
王子妃とアーベルがつききりで慰めてくれていたが、ナターリエはただただ混乱していた。
自分が伯爵家の後継ぎとなり、ふさわしいものと結婚する必要があると言われたが・・・そんなことは考えることすら難しい。
どこかへ行ってしまいたい。
消えてしまいたい。
家出をした日にナターリエを襲った衝動が再び胸の奥によみがえる。
いっそ両親の後を追ってしまおうか。
それとも・・・。
ふいにナターリエの胸中にゲオルグの面影がよみがえった。
彼にこのことを伝えたら・・・。
彼はさまざまなことで苦しみ、救いを求めていた。
不遇な家庭環境や、今の仕事はやりたい仕事ではなく亡くなった兄のあとを無理やり継がされたこと、そんな仕事なのに収入も少なくて結婚も考えられないこと・・・。
自分が伯爵となれば、彼を助けてあげられるのだろうか。
両親のことは助けられなかったが、せめて彼だけは・・・。
「ナターリエ嬢・・・もうナターリエと呼んでもいいかしら?」
アルメリーアがそっと声をかけてきた。
涙も出尽くし、疲れ切って取り止めのない考えに漂っていたナターリエは我にかえる。
「妃殿下・・・はい、もちろんです・・・」ハンカチで目の縁を拭いながらかすれた声で答える。
「では、ナターリエ・・・実はね、もう一つお話しないといけないことがあるのよ。これもあなたには辛い話になってしまうのだけど・・・」
アルメリーアはナターリエが気の毒でたまらなかった。
ひどい話を立て続けに聞かせることになるが、二度に分けるよりもこの方がまだましかと思われた。
それに、ゲオルグへの思慕は彼女に思わぬ行動を取らせるかもしれない・・・。
王子妃の言葉に、ナターリエはその場から逃げ出したくなった。
もうやめてと叫びたくなった。
だが、そのどちらもできなかった。
逃げ場を探すように視線をさまよわせると、いつの間にか家出をした日に自分を助けてくれた男が・・・マティアスが部屋に入ってきていた。