小説「光の物語」第104話 〜手紙 2 〜

小説「光の物語」第104話 〜手紙 2 〜

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手紙 2

アルメリーアはお茶会に現れたナターリエに驚いた。
これまでのナターリエは装うことにあまり興味がなさそうで、少々平凡な印象だったが・・・。
今日の彼女はそうした面にも気を配り、ぐっと華やいで見えた。
何かきっかけでもあったのだろうか?


「テレーザにいろいろ教えてもらいましたの・・・彼女はおしゃれが上手ですから」
アルメリーアにとても素敵だと言われ、頬を染めながらナターリエは答える。
なるほど、確かにテレーザはいつもしゃれた着こなしをしている。
それでナターリエもその方面に関心が生まれたのだろうか?


「いつかは社交もしないといけないでしょうし、シエーヌに戻れば領主としての務めもありますし・・・そういう時、きれいに身支度していると心強いものだとアーベル様が」
「ええ、その通りだわね」
アーベルの実用的なアドバイスにアルメリーアは微笑む。


「それに・・・マティアス様も・・・」
「マティアス様?」
アルメリーアは思わず耳をそばだてた。ここでマティアスの名?
「ええ・・・あの方も私が良い方と出会うことを願ってくださっていて・・・装うことはそれにも役立つかと」
「ああ、ええ、そうね・・・」
アルメリーアはなんとなく拍子抜けした。ナターリエはお見合いにも前向きになってきたのだろうか?


マティアスはナターリエが他の誰かと結ばれることを願い、ナターリエもそのつもりでいるようだ。
二人が結ばれてくれればという夫の期待は当たらなかったということだろうか・・・。


「マティアス様からは?最近は何かお手紙でも?」
「ええ。シエーヌのことや、領主として学ぶことなどを教えてくださいます。知らないことばかりで・・・」
「無理せず一歩ずつがいいと思うわ・・・あなたなら大丈夫よ」
相変わらず内気ではあるが、以前よりどこか大人びたナターリエをアルメリーアは励ました。


小ぢんまりしたお茶会にはナターリエの他にも数人の貴婦人や令嬢たちが招かれている。
ナターリエはアルメリーアが彼女たちに平等に声をかけ、歓談する姿から学ぼうとした。
あんなふうに上手に話ができればいいのにと思いながら。


ナターリエは思い出していた。
クリスティーネの婚礼の日、盛装した自分を見てマティアスが浮かべた賞賛の表情を。
このところテレーザから美容や服飾のことを学ぶとき、心の励ましにしているのはその時のことだった。
彼のために良い領主になりたい。彼に喜んでもらいたい。


こんな考えは愚か?それとも不実なのかしら・・・?
ナターリエはふとそう思う。
彼を思いながら別の人との出会いを探すだなんて・・・。


でも、でも・・・それが私の務めだもの。それに私だけの秘密だもの。
だから、別にかまわないわよね・・・?


時折かけられる貴婦人たちからの声に無難に返事をしつつ、ナターリエの心は忙しく葛藤していた。