小説「光の物語」第116話 〜王都 2 〜

小説「光の物語」第116話 〜王都 2 〜

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王都 2

「流行病の対応、実によくやってくれた、マティアス」
「陛下からのお褒めのお言葉、光栄の至りです」
国王の執務室で言葉をかけられたマティアスは恭しく頭を下げた。


マティアスは数ヶ月ぶりに王都に参上していた。
流行病の対策の褒賞に加え、隣国ブルゲンフェルトに嫁いだ国王の姪・ミーネの亡命計画についても話し合いたいと、国王から直々の呼び出しを受けたためだ。
しばらくぶりのマティアスの姿に国王もディアルも喜んでいる。


「おまえがシエーヌにいたおかげでかの地の犠牲者は桁違いに少なかった。各地の総督にも見習わせたいものだ」
国王の言葉にディアルも頷いた。
「確かにそうだ。初期に対策を徹底したのが奏功したな」
口々に称賛されたマティアスは少々居心地悪そうに笑う。
「これまで陛下と殿下のおそばで学べたからこそです」
胸に手を当てて再び頭を下げた。


「なんだ?神妙すぎてなんだか不気味だぞ」
横からディアルが混ぜ返す。
「ところでもう一つの懸案事項、ブルゲンフェルトのミーネの件だが・・・亡命経路に目星は?」
国王の言葉と共に場の雰囲気も変わり、三人は机に大きな地図を広げて検討にかかった。



「シエーヌの暮らしにはもう慣れたか?」
会議を終えたディアルは回廊を歩きながら尋ねた。
王城の庭は朝からの小雨に濡れていたが、空は少しずつ明るくなってきている。
「そうだな。街の様子はつかめてきたし、城の内部もかなり」
マティアスの表情には充実感が表れているとディアルは思った。
シエーヌの地に愛着が生まれてきているのだろう。自ら手入れし、守っている土地なのだからそれも道理だ。
「それは何よりだ」
一旦言葉を切り、あえて話題を持ち出してみる。
「ナターリエ嬢が結婚して戻るまで、おまえがシエーヌに飽きることはなさそうだな」
その言葉にマティアスは一瞬ぴくりとしたが、何食わぬ顔で答える。
「そうだな」


これだけでは判断がつかないな。ナターリエの結婚話にマティアスが嫉妬しているのかどうか。
ディアルは従兄弟の様子を伺いつつさらに続ける。
「彼女、今日もサロンに来ているはずだぞ。アルメリーアが音楽会を開くと言っていたからな」
「そうか。ではこのまま挨拶に行くことにしよう」
二人はサロンのある方へと歩みを向けた。


「アルメリーアの話じゃ、ナターリエ嬢は大人気らしい。先日は2人の若者が彼女と踊ろうとして喧嘩になりかけたとか」
「・・・へえ」
マティアスは気のなさそうな相槌を打つ。
「この間の夜会でも名士の息子といい雰囲気だったし。手を取られて赤くなってるのを見かけたよ」
「・・・ふーん・・・」
言葉少ななマティアスにディアルは期待を押し隠す。
この話題に興味がないだけか?それにしては全身が耳のような様子だぞ。
「最近とくに綺麗になってきたようだし、意中の相手がいるのかな?秋までには晴れて人妻になるかもだ」
「・・・なぜ私にそんな話をする?」


そう聞くマティアスにディアルも何食わぬ顔で答えた。
「シエーヌの管理者だろ?関心があるかと思って」