小説「光の物語」第130話 〜王都 16 〜

小説「光の物語」第130話 〜王都 16 〜

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王都 16

「まあ、ナターリエ様、そんな子に甘い顔をしてはだめよ」
新婚のクリスティーネの屋敷に招かれたナターリエは、彼女の反応に驚く。
近況を聞かれ、社交の際の厄介ごととしてブリギッテのことを話したところだった。
「あ、甘い顔をしているつもりは・・・」
最近はテレーザの特訓を受け、以前よりもブリギッテをかわせるようになっている。
だがそれでもブリギッテはしつこくつきまとい、寛容だったナターリエも怒りを覚え始めていた。


「でもその子はちょっかいを止めないんでしょう?ぎゃふんと言わせてやらなくちゃ」
ぷんぷんするクリスティーネをナターリエはなだめる。
「クリスティーネ様、あまり興奮なさらないで・・・いまは大事な時なんだから」
懐妊したクリスティーネから便りをもらい、見舞いとお祝いをかねてナターリエは訪れたのだった。
まだ体型に変化はないが、肌艶も良く元気そうなクリスティーネは幸せそのものだ。
「ありがとう。リヒャルトにもいつもそう言われるんだけど・・・つい」
照れ笑いするクリスティーネにナターリエも笑みを誘われる。


クリスティーネの夫のリヒャルトは気を遣って席を外していた。
同行してきたテレーザも加わり、女同士の話に花を咲かせる。
「王城にいた頃が懐かしいわ・・・妃殿下はお元気でらっしゃるかしら」
「ええ、とても。あなたのことを気にかけてらっしゃったわ。落ち着いたら顔を見たいと」
それを聞いたクリスティーネはうっとりしたようにため息をつく。
「ほんとに素敵な方・・・あの方のおそばで過ごせて幸せだったわ」
王子妃のそばで見習いをしていた頃の彼女を思い出し、ナターリエも感慨を覚えた。
あれはまだ昨年のことなのに、彼女も自分もいまやまったく違う身の上だ。



「お相手探しの頃は、私もいろいろなことがあったわよ・・・おかしな子につきまとわれたこともあったし、リヒャルトにちょっかいを出そうとする子だっていたし」
「まあ・・・本当に?」
ナターリエは驚きに目を見開く。
幸せの星に生まれついたかのようなクリスティーネも、それ相応のことをくぐり抜けてきていたのだ。
「そうなの。それに妙な遊び人にしつこく口説かれたりね・・・その時はマティアス様が助けてくださって」
「マティアス様が・・・」
思わぬところで恋しい人の善行を聞き、ナターリエはときめいた。
「おかげで難を逃れたの。あの方はとてもご親切な方ね。あまり表にはお出しにならないけど」
「ええ、本当に・・・その通りね・・・」
ナターリエは心から賛同した。


やっぱりあの方は素晴らしい方だわ・・・ナターリエはあらためてそう思う。
彼と知り合えたのはどれほど幸せなことか・・・それを決して忘れずにいたい。
たとえ手が届かなくても。


「そうだわ、ナターリエ様、そのいやな子を追い払う方法があってよ」
「えっ?」
マティアスへの思いに浸っていたナターリエはきょとんとして聞き返す。
ブリギッテを追い払う方法?
「ええそう。テレーザにも協力してもらって・・・」
クリスティーネの話にナターリエは絶句し、テレーザは笑いに肩を震わせた。