「やはり新しい道にはこの経路がもっともふさわしいかと」
地図を前にしてマティアスが各地の状況を説明する。
彼が宮廷を離れていたのは国内に新たな道を作るための調査が目的であった。
王とディアルはめぼしい産業を持たないローゼンベルク王国の現状を憂いていた。
そして、外貨獲得の一手として土地と交通の整備を望んでいた。
交通の便がよくなれば流通や観光のために周辺国から人が流入するようになる。
また、岩がちな国土で酪農を発展させるためにも土地の整備は重要だった。
「行き来がしやすくなるのはいいが、よからぬ輩が入り込んでくるのは困るぞ」
重臣の一人が述べる。
「このままではわが国の先細りは目に見えている。要はどの程度まで変化を許容するかだ」
別の一人が答えた。
「だがゲルトナー殿のいうことももっともだ。作った道から侵略軍に入ってこられてはたまらん」
「資金はどうやって調達するのだ」
「それに人足もだ。うちの領土の若者の多くは他国に出稼ぎに行っているのだぞ」
重心たちはめいめいの主張を展開し、会議はすこぶる長引いた。
「やれやれだな」
会議のあとディアルと二人になったマディアスは苦笑いした。
「まあ予想通りだな。変化には反発がつきものだし、道を作るには人も金も年月もいる」ディアルが答える。
「それに侵略の危険が増すのも本当のことだ。整備するだけして他国に取られたなんて、笑い話にもならん」マティアスは懸念点を口にした。
「それでも・・・やらねばな。これまで我が国は外国に傭兵を派遣することで外貨を稼いできた。しかしこのやり方ではこの先立ち行かぬ。他国の戦争のために我が国の若者が死んでいく現状は変えねばならんのだ」
ディアルの言葉にマティアスは頷いた。