小説「光の物語」第5話 〜婚礼 1〜

小説「光の物語」第5話 〜婚礼 1〜

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婚礼 1

婚礼の日は雲ひとつない晴天に恵まれた。
大聖堂に現れたアルメリーアは、ディアルだけでなく物見高い列席者の心をも魅了した。
シンプルだが贅を尽くした花嫁衣装はリーヴェニア王家の伝統と格式とを表し、同時に彼女の美しさを比類ないものにしていた。


祭壇の前に現れた彼女を見た瞬間、儀式のことも居並ぶ観衆のこともディアルの頭からは消えてしまった。
祭壇の前で彼女と向かい合い、手を取り合って誓いの言葉を述べる時も、ともすれば彼女の瞳に溺れそうだった。
誓いのキスはそっとやさしく触れるにとどまったが、唇を離した後も姫から目を離せず、彼女は恥じらってうつむいてしまった。
人前での儀式に慣れているため滞りを生じることはなかったが、彼をよく知るマティアスだけはその様に笑いを噛み殺していた。


式のあとは父王や他の王族と共にバルコニーから群衆の歓声に応える。
笑顔で手を振り、祝福に言葉を返しながらも、隣に立つ姫・・・いまは彼の妃となったアルメリーアの存在を意識せずにはいられないのだった。